ワシーム・コトブ氏 インタビュー 

ワシーム・コトブ氏 〜NHKラジオ・海外向け放送 インタビュー
10月27日及び11月3日 アラビア語圏向け放送から
去る10月27日、11月3日の二回にわたり、NHKラジオ放送・海外向け放送で放送された、シリア人ピアニスト、ワシーム・コトブ氏のインタビューの模様をお伝えします。この放送はアラビア語圏向けにNHKラジオ放送局が放送したもので、アラビア語による放送は多くのリスナーに親しまれています。下記リンクの「コンサートレポート」にも掲載しています。

ワシーム・コトブ氏コンサートレポートLinkIcon

Q. プロフィール、日本との関わりを教えて下さい。

  • A. イギリスのバーミンガムで生まれ、シリアのダマスカスで育ちました。英国王立音楽院でピアノ演奏とピアノ教育資格を学び、またリバプール熱帯医学学校で医療制度と病院経営について学び、音楽と医学の学位を修得しています。ヨーロッパ各国、中東地域での演奏活動の傍ら、シリアの国立ダマスカス高等音楽院でピアノを教えています。日本では、今年(2013年度)大阪国際音楽コンクールに招待審査員として参加しました。


Q. 自ら作曲し、コンサートで演奏した楽曲「シリア」はどのような曲ですか?

  • A. 新しい一日の訪れを予感する<前奏曲>から始まり<夜明け>を迎え、明るくなっていき、人々の日々の暮らしが<踊り>などで描かれる中、いつしか忍び寄る人々の不安や動揺が<痛み>として現れ、<すべてが赤く>染まる悲劇が起こります。しかし、次第に<希望>が人々の間に起こり、人々の強く気高い希望として高まって行き、最後には有名な<ダマスカスのバラ>として美しく花開く、というストーリーになっており、そこに自らのメッセージを込めた楽曲として作曲、演奏しました。


Q. 千葉県多古町で小学校を訪問されたとのことですが、どのような一日になりましたか?

  • A. 多古町では、二つの小学校を訪問しました。(久賀小学校/ 多古第一小学校)シリアは現在非常に難しい状況にありますが、その中で日本を訪れ、平和のメッセージを届けたいと願い、演奏を通じて子供たちと交流しました。
  • 多古第一小学校の子供達はミニコンサートのお礼として「世界が一つになるまで」という歌を歌ってくれ、まるでこの瞬間に二つの国の人々の間で対話ができているように感じることができました。
  • ミニコンサートではシリアのお話も多少はさみながら、シリアの文化的な側面や、その他の国の文化(ピアソラによるアルゼンチン・タンゴを演奏)を伝えられるような音楽を演奏しました。その中で自分が伝えようとしたメッセージは、「シリアはここ数年間、世界でも最もつらい状況にはあるが、自分を含むシリアの多くの人々は日々変わらず活動を続けているということ、そして争いの中でも、そうした活動を通じて音楽家や芸術家がシリアの人々や世界の人々にメッセージを届けられないわけではない」というものです。


Q. 多古町文化プラザホールでのコンサートはいかがでしたか?

  • 多古町のコンサートホールはすばらしく、スタッフもすばらしかったです。そして観客もとても温かく迎え入れてくれました。そうした温かい雰囲気がとても嬉しく思いました。聴衆の中には子供たちもいて、まるで応援してくれるかのようでした。自分が外国から来た異邦人であることなど感じずに、リラックスして、また楽しんでよりよく演奏できたと思います。


Q. シリアの音楽活動の今の状況を教えて下さい。

  • 困難は人に新しい道を開き、強く賢くすると思います。この数年、シリアの音楽学校では困難はあるものの、生徒たちは痛みを感じるかのような悲しい現実を乗り越えて頑張っており、挑戦は続いています。音楽の音は途切れていません。それはまるで今のシリアの人々の姿を象徴するかのようでもあります。2013年4月にシリアで三重奏のコンサートを行うことができましたが、来年もやりたいと考えています。


Q. ワシームさんの夢をお聞かせ下さい。

  • 私の夢は、シリアの他の音楽家皆が願っているものだと考えています。三重奏や四重奏、オーケストラとの共演、オペラハウスなどでの演奏を実現したいです。戦争は続いていますが、私たちシリア人は何もないゼロの状態になってしまったわけではありません。戦争前までシリアで開催されていたある音楽コンクールは世界的にも注目を集め、世界15カ国、日本からの参加もあった高いレベルのコンクールでした。来年2014年にはそうした文化的な雰囲気がシリアに戻ることを強く願っています。